1895年生まれのフレンチワークウエア “Le Travailleur Gallice” これぞフレンチ・ワークパンツ LE PANTALON

洋服のこと

今回はこれぞフレンチワークパンツと呼べるであろうガリスのもう一つのマスターピース、LE PANTALONを御紹介したいと思います。

フランスのワークパンツの歴史を随所にちりばめたディテールはなかなか見ごたえのあるものです。一つ一つ御紹介をさせていただきます。

まずはぱっと目を引くフロント部分から。
ビンテージ好きの人々にはおなじみの、ボタンフライの一番上のボタンがメタルフックになっている仕様です。

皆さんご存じの「これがなければフレンチワークパンツじゃねーぜ」と言ってもいいぐらいのアイコンです。
では、このフックがなぜ取り付けられているのかは御存じでしょうか?

気が付けばフランスと仕事をするようになって20年が経ちましたが、この問いに明確な答えをくれる人間に初めて出会うことができました。
世代交代が進み、本当のフレンチワークを知る人間がどんどん少なくなっている中で、ガリス生産を行っている工場の前社長=現在の社長のお父さんは、フレンチワークウエアの遍歴を生で体験してきた貴重な人物です。
彼と雑談をするなかで、この問いを投げかけてみたところ「フック?あれ付けとくとボタンが長持ちするんだよ」と、さも当たり前に教えてくれました。
一番上のメタルフックに力がかかり、受け止めてくれることで、他のボタンの割れや、ほつれ等のトラブルを劇的に低減してくれるそうです。
ボタン付けなんて極力やりたくなかったであろう、無骨なワーカーたちにとっては質実剛健なありがたいディテールだったようです。
ワークウエアしかり、機能的なプロダクトにはすべてに意味がある事を再認識させてくれました。「形態は機能に従属する」ってやつですね。


ガリスのパンツを特徴付けているナイスなディテールは後姿にも多く見てとれます。
これまたビンテージ好きな人にはおなじみの話ですが、フランスのワークパンツには一つしかヒップポケットが付いていません。
通常、向かって右側にパッチポケットがひとつ付くのみです。

一般的なフレンチワークパンツのバックビュー(参考画像)

ワークパンツという性質上、極限までコストを切り詰めた結果なのですが、なぜ右のポケットだけ残したのでしょうか?
先程のお父さんに尋ねてみたところ「財布だけは持ってたいからなー。暑くて上着は脱いでも、ズボンは女の前でしか脱がねぇからな」との事でした。横に座る奥さんが微妙に顔を赤らめていたのを僕は見逃しませんでした。若き日のあの情熱的な夜を思い出していたのでしょう。
右利きの人が多いから右のポケットだけ残した感じなんでしょうね。
ともかく、右ポッケしかないパンツをみるとフランスの物だねとすぐわかります。

ですが、この一つポケット、結構使い勝手が良くないんです。ハンカチ、財布、携帯…結構ヒップポケットって使用頻度高いんですよね。
下の画像をご覧ください。ガリスのLE PANTALONでは右側にはサイドシームに縫い込まれた大きめのパッチポケットが鎮座していますが、左は片玉縁のポケットが取り付けられています。

右サイドにはインパクト大のおおきなパッチポケット。左には目立ちにくい片玉縁のポケット

この左右非対称のガチャポケットによって、一見、左にはポケットが無いようにも見えます。
伝統的なフレンチワークパンツのイメージを崩すことなく、利便性にも配慮した、非常によく考えられているディテールだと思います。
派手なディテールではないですが、ガリスのパンツを象徴するアイコンとも言える仕様です。

真鍮のバックルが付いたシンチバックもデザインに大きなインパクトを与えています。
両サイドはダーツに挟み込んで縫製したのちに、フロントのフックと同じ形状のカシメで補強されており、とても重厚な作りになっています。フロントフックと同じパーツを用いることで、前後の整合性が高く、デザイン面においても秀逸なポイントだと感じます。

もちろん、ワークパンツに不可欠のエクストラポケット。サイドポケットも取り付けられています。
LE PANTALONに採用されているのは、その昔メジャーを携帯するために用いられていた、いわゆるスケールポケットです。
当然現代のような巻き尺を想定したものではなく、折りたたみ式の定規を持ち運ぶ目的で作られています。

右のパッチポケットの下にはスケールポケット

ガリスのスケールポケットは幅が広めで底も浅いので、実は6インチぐらいのスマホだとばっちりと収める事ができます。

これ、結構使い勝手いいですよ。
ケツポケに携帯入れると、しゃがんだり、座ったりで、結構圧力がかかります(まさにケツ圧)。
場合によっては曲がっちゃったりもするんで注意が必要ですが。この位置だとそんな心配もなく、常時携帯入れとして使用する事ができます。

他にも、ウエストに取り付けられたサスペンダー用のボタンや、クロッチ部分に設けられた三角マチによって足の可動域が大きく確保された股下など、随所にワークパンツの仕様が盛り込まれた贅沢なパンツになっています。
まさに LE PANTALON (= The Trousers) と呼ぶにふさわしいマスターピースかと思います。

ウエストにはボタン式サスペンダーを取り付ける為のボタン付き。実際にサスペンダーを付けなくてもデザイン上のアクセントになります。
股下の三角マチのおかげで足の可動域は極めて大きく快適です。

最後に着用イメージ画像を載せておきます。
ありがたいことに、ご契約のお取り扱い店様のホームページ等でこのパンツ御紹介していただいておりますが、多くの場合、新品の状態のものを撮影されているので、ノンウオッシュで、センターに折り線が残っているようなものが多いです。
個人的には、ガリスのこだわりのモールスキンを用いたアイテムは、洗ってこそ、その真価を発揮すると思っております。特にこのパンツは洗った後の方が味がでると思いますね。
と言う事で、モデルに多少の難がありますが、数回の洗いを重ねた製品を撮影してみました。シルエットなども含めて御参考になれば幸いです。

太すぎず、細すぎず。適度にテーパーもきいて履きやすいシルエットかと思います。
フランスの生地を用い、フランスで、フランス人の手によって作られる本当のフレンチワーク。税抜き本体価格16,800円はお値ごろ感あるのではないでしょうか。
モールスキンのエイジングもばっちりと味わえ、おすすめです!

【番外】
ガリスではモールスキンにしては珍しいホワイトの展開もあります。
ジャケットはなかなか難易度が高いですが(メチャメチャ格好いいですが)、パンツはとても使い勝手がいいです。
ホワイトのパンツってペラペラだと何だか落ち着かないですが、モールスキンぐらいコシのある生地だとすごくはきやすいですね。
ブラック&ホワイトで、シックなフレンチカジュアルなんてのもたまにはどうでしょう。

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