1895年生まれのフレンチワークウエア “Le Travailleur Gallice” 番外編

洋服のこと

本日はちょっと趣向を変えて、変り種のモデルを御案内させていただこうと思います。

さて、いったい何が変り種なんでしょうか?

ここで一旦別画像を御紹介させて下さい。

こちらの画像はガリスのアーカイブモデルとして保管されていたサンプルです。「モールスキンってこんなに柔らかくなるの?!」って言うくらいクタクタになるまで着こまれたヴィンテージです。

大きな穴や、擦切れが沢山ありますが、そのすべてが上の画像のように丁寧にリペアされています。
物が貴重だった当時、愛着をもって大切に扱われていたことが伝わってきます。50年代初頭頃に生産された製品ではないかとの見解です。

余談ですが、内ポケットには今と変わらないデザインのガリスのネームが燦然と輝いております。

このような極めて初期のモールスキンジャケットにはいくつかの特徴的なディテールがあります。
最も代表的な仕様がステッチ止めされた襟ではないでしょうか。襟先が下の画像のようにステッチで縫い付けられ固定されています。

なぜこんな仕様が生まれたのでしょう?この問いに明確に答えられるフランス人には残念ながら会ったことがありません。。。

なので、ここからはあくまでも僕個人の推測でしかないのですが、ワークウエアであるモールスキンジャケットにおいて、基本的に襟は邪魔なものでしかなかったのではないかと思います。
寒い場所、風の強い場所等で用いられるワークジャケットであれば、防寒の意味で襟を立てる必要もあったでしょう。ですが、製鉄所や機関車の蒸気機関室で用いられることが多かったモールスキンにおいて、防寒の必要に迫られる機会はあまりなかったのではないかと思います。それよりも蒸し暑い状況でめくれ上がる襟は邪魔でしかない。。。という状態だったのではないでしょうか。
じゃあ襟なんかいらないじゃん?取っちゃえば?という事で後にノーカラーのジャケットが生まれたりもしますが、この時代、50年代のフランスにおいて、上着に襟が付いていないなんて事はあってはならない事だったのではないでしょうか。「下着じゃないんだから、紳士たるもの襟のついた上着を着ないとね」というドレスコードが存在したのではないかと考えています。なんせスポーツをする時でさえ襟付きのシャツを着ないといけない社会ですから。
邪魔だー。でも、切り取る事もできない。。。じゃあ縫い止めちゃえ!という発想から生まれた仕様じゃないかと思うのです。ボタンダウンシャツの起源にも通じる感じですね。

上記推測の正誤はどうあれ、50年代頃のモールスキンジャケットはこのように縫い止められた襟を持つモデルが散見されます。

次なる画像も、やはりガリスのアーカイブモデルですが、こちらはタグも残ったデッドストックの状態です。当時の生の状態のモールスキンのクオリティーも見て取る事ができます。

こちらのモデルにはアンバランスに小さな胸ポケットが取り付けられています。
このようなアンバランスなパーツを携えたモデルは、フランスに限らず、各国のヴィンテージでも見る事ができますね。何ゆえに変なサイズなポケットにするのか?何のためのポケットなのか?好奇心を掻き立てられる仕様です。
これも僕の推測ですが、効率化を重視した結果(=面倒くせぇからこれでいいだろ)、ボディのサイズに限らず、ポケットは全サイズ共通のパターンを使用したため、大きなボディに小さなサイズ用のポケットが付く。。。みたいな事が起こりえたのではと思ったりします。
長い事仕事を一緒にしていると、そんな仮説を納得させるだけの「血」をフランス人から感じる事が少なくありません。よく言えば「おおらか」、悪く言えば「適当、いいかげん、大雑把、不注意、そそっかしい、やる気あるのか?ちゃんと確認したのか?お風呂入ったか?。。。あぁ、悪口が止まらない(冗談だよ、フランスの友人達よ!)。
こういったヘンテコなポケットを持ったモデルも古い時代のビンテージにみられる特徴の一つです。

さて、最初の画像に話を戻しましょう。

言われてみればアンバランスに小さな胸ポケット。当然ポケット口の補強布も逆山形のヴィンテージ仕様です。
そして

襟も縫い止められています。

そうなんです。こちらのモデルは大阪のIVY&NAVYさんとのコラボで作成した、ガリスのヴィンテージアーカイブのディテールを盛り込んだスペシャルヴィンテージモデルなんです。
おかげさまで商品はあっと言う間に完売となったようです。お買い上げいただきました皆様ありがとうございます!フランスのワークウエアの歴史を感じさせる玄人好みのモデルでした。

ガリスに限らず、フレンチワークウエアの歴史や遷移を紹介させていただくうえで、とても良い題材でしたのでここで紹介させていただきました。

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